2014年の秋、MicrosoftはWindows 10を最後のメジャーバージョンアップとする戦略に打って出ることを表明した。そして、Windows 8/8.1から9を飛ばして“10”がリリースされたのが、2015年7月29日だ。名前こそWindows 10となったが、それが11、12、13とメジャーバージョンアップを重ねることは、もうないとされている。つまり「変わり続けるWindows」が誕生したわけだ。
この1年間は、コードネームでいうところの初期バージョンのThreshold1(TH1)、November UpdateのThreshold2(TH2)と変わり、今回はAnniversary UpdateのRedstone1(RS1)となった。休む間もなく、次はRS2への歩みが始まる。Microsoftでは、2017年に2度のバージョンアップを予定している。来年の今頃、Windows 10が2歳の誕生日を迎える頃には、RS3がAnniversary Updateとしてリリースされるということだろうか。
ちなみに、Insider PreviewのFast Ringは、週1とは言わないが、1カ月に平均3回程度、正確に数えるも大変なくらいだが、恐らく28回の更新を経て最新ビルドに至っている。この連載では、ずっとInsiderPreviewを追いかけていたし、手元の環境の数台は、すべてのInsider Previewをインストールしてきたので、大きく変わったという実感があまりない。だが、素のNovember Updateと比べても、そのルック&フィールは変わっているのに、変わった感じがしないのだ。
変わり続けるから変わった感じがしない
さて、そのAnniversary Updateだが、通常の1511環境であれば、設定のWindows Updateがキャッチして更新を行なうはずだ。実際、ずっとInsider Previewを評価してきた16台のPCはそうなった。ところが、17台目のPCは、Insider Previewに参加させず、1511の最新状態を維持してきたが、ここにはWindows Updateが、いつまで経っても降りてこない。
更新を受け取る方法は、もう1つ用意されている。それは、先の履歴ページにある、「Anniversary Update を入手する」のリンクをクリックする方法だ。そのクリックでWindows 10アップグレードアシスタントをダウンロードすることができ、ウィザード方式で更新することができる。特に不自由はしていないので、そのまま待とうかとも思ったが、結局根負けして、先ほどアップグレードアシスタントを使った更新が完了したばかりだ。
1511から1607での、操作性に影響を与えるかもしれない目に見える大きな変化としては、スタートメニューのデザインの見直しがある。スタートボタンは以前と変わらずタスクバーの左端に表示されているが、それを開いて表示されるスタートメニューが、すべてのアプリがその直下に並ぶようになり、電源ボタンや設定ボタンが左ペインに縦に並ぶようになった。
また、時刻表示がタスクバー右端の座をアクションセンターに譲り渡し、アクションセンターを開くためのボタンがそこに表示されるようになった。
ほかには設定のメニュー体系が多少見直されたものの、相変わらず、コントロールパネルとの間を行き来しなければならない点は変わりない。
目立った新機能としては、Windows Inkやモバイルホットスポット、Miracastレシーバー機能の追加などがある。だが、これらは、知らなければそれで済む話であって、カジュアルにWindowsを使っている一般的なユーザーであれば、もしかしたら新機能の追加に気がつかないかもしれない。逆にいうと、このくらいの頻度で変わり続けていれば、変わることへの抵抗感も抑制され、古いバージョンに居座りたいと思うユーザーは少なくなる可能性もある。
不具合も散見
そういう意味で、Windows 10 Anniversary Updateは、変わり続けたにも関わらず、変わった感じがしないバージョンだと言える。そして、それこそがMicrosoftの狙いでもあったのではないか。
もちろん問題が出ていないわけではない。もっとも苛立つものでは、ブラウザのEdgeでまれに日本語入力がオンにできなくなる不具合に遭遇している。
PCベンダー各社からは、既存機種の制限事項が公開されはじめている(NECパーソナルコンピュータ/富士通/東芝/パナソニック/VAIO/日本HP/Lenovo/Dell)。
もし、更新後に、トラブルに遭遇しているなら、それらのページを参照すれば、何かヒントになることが掲載されているかもしれない。
手元の環境では、InstantGo(モダンスタンバイ)対応機において、[設定]-[システム]-[電源とスリープ]にある、[退席中であることをデバイスが認識しているときに電力を節約する]の挙動がおかしい。そもそも、これが何を意味するのかがよく分からないのだが、少なくとも、ここがオンとオフの場合によって、その下の[ネットワーク接続]で、[スリープ中もネットワークに接続したままにする(バッテリ駆動時)]の項目が表示されたりされなかったりする。
また、[設定]-[更新とセキュリティ]-[Windows Update]の[詳細オプション]で、「更新後にサインイン情報を使ってデバイスのセットアップを自動的に完了します」が表示されるハードウェアと、されないハードウェアがある。これは、再起動を伴う更新において、再起動後、Windowsにサインインしないと更新を完了できないことを回避するために、特別なトークンで自動的にサインインするというものだ。これをオンにしておくことで、更新後、次のサインイン時にすぐにWindowsが使えるようになる。ドメイン参加のPCやExchangeメールなどで、特別なポリシーが適用されている場合には使えない場合があるようだが、ほぼ同じ環境でもあったりなかったりするのが解せない。
また、メーカー製ノートPCのSynapticsタッチパッドドライバの挙動も怪しい。こちらは、Outlook 2016など2ペインのアプリケーションにおいて、アクティブではない方のペインを2本指スクロールさせようとマウスポインタをそのペインに移動させると、ポインタが異様に小さくなってしまうというものだ。
17台という限られた環境のアップデートの中でもわずか、それに、致命的なものではないのが救いではあるが、これらについては早期のドライバアップデートを期待したく、いくつかのベンダーには現象を伝えてある。
あらゆる環境を快適にする
17台のうち、一番古いのは「レッツノートCF-SX1」で2012年2月の発売だ。搭載OSはWindows 7だった。Core i7-2640M搭載でSSDは256GB、メモリは増設して16GBにしてある。また、最新プラットフォームであるSkylakeのノートPCや、NUCが数台、また、ベンチマーク的に最速な環境としては、Intel X99マザーボードと、10コア/20スレッドのBroadwell-EことCore i7-6950X環境も調達して試してみた。また、ここ数カ月の間にベンダーから評価用に借りた最新製品PCなどでも、その時点で最新のInsider Previewを評価してきた。
Windows 10はPCの処理性能に関わらずOSの体感処理速度があまり変わらない印象だ。つまり、最速のPCが快適なのは当然として、4年以上前のPCでも不快感を感じるほどではない。ハードウェアの互換性さえ確保できるのなら、迷わずアップデートして良いのではないだろうか。特に、1511からのアップデートでは、何かが変わったことで大きな違和感を感じるようなこともないと思う。長年Windowsと付き合ってきたから分かるが、1607にはキレに近いものを感じる。今までで最高のWindowsだとMicrosoftが豪語するのも、なんとなく分かる。