Folio G1は、スタイルとしてはオーソドックスなクラムシェル型ノートPCだが、薄さと軽さを重視して、アルミニウム合金をCNCで削り出した、いわゆるユニボディが採用されている。
最厚部は12.4mmと非常にスリムで、デザインも洗練されている。筐体のサイズは、282×209×12.4mm(幅×奥行き×高さ)で、前モデルのHP EliteBook Folio 1020 G1の310×210×15.7mm(同)に比べて、液晶サイズは変わっていないが、横幅が28mmも小さくなり、厚さも3.3mm薄くなっている。
ビジネス向けノートPCは、単に薄くて軽いだけでなく、堅牢性、耐久性も求められる。Folio G1は、米軍調達基準(MIL-STD)に沿った、落下テストや衝撃耐久テスト、振動テスト、高温環境テストなど、12項目の厳しいテストをクリアしており、タフな環境でも安心して利用できる。薄さはトップクラスだが筐体の剛性は高く、片手で本体の手前角を持って持ち上げても、たわむようなことはない。
CPUはCore mを搭載し、ファンレス動作を実現
PCとしての基本性能を見ていこう。Folio G1は、BTOによって搭載CPUやSSDなどをカスタマイズできる。CPUは、Core m3-6Y30(0.9GHz)、Core m5-6Y64(1.1GHz)、Core m7-6Y75(1.2GHz)から選択でき、SSDはM.2フォームファクタの128GB SATA接続/256GB SATA接続/256GB PCI Express接続/512GB SATA接続から選択できる。ただし、メモリは8GB固定で、増設はできない。
今回の試用機は、CPUがCore m5-6Y64(1.1GHz)、SSDが512GB SATA接続という仕様だった。Core mは、主に2in1やタブレット向けに開発されたCPUであり、消費電力が低いことが利点だ。Core iに比べるとクロックが低く、性能は多少落ちるが、発熱が小さいため、ファンレス動作や長時間のバッテリ駆動を実現できる。
液晶が180度完全に開く
液晶ディスプレイとしては、12.5型のフルHD液晶または4Kタッチ対応液晶を選択できる。4Kタッチ対応液晶を選ぶと、重量が約37g重い約1.07kgとなるが、携帯性はほとんど変わらない。なお、4Kタッチ対応液晶は、Core m7搭載モデルのみ選択可能となる。どちらもIPS液晶を採用しており、視野角は広い。
今回の試用機には、タッチ非対応のフルHD液晶が搭載されていたが、表面が非光沢処理されているため、外光の映り込みが抑えられており、見やすかった。長時間ディスプレイを見続けることが多い、ビジネス用途には非光沢液晶の方が目への負担が少ないので、向いていると言える。4Kタッチ対応液晶は光沢タイプとなるが、その代わり、Adobe RGBカバー率95%の広色域表示を実現する。
また、液晶ヒンジとして「ピアノヒンジ」と呼ばれるものが採用されており、液晶を180度完全にフラットな状態まで開けることも特筆できる。前モデルのHP EliteBook Folio 1020 G1の場合は液晶を約130度までしか開くことができず、車内で座って使う場合など、やや使いにくいことがあったが、Folio G1ではそのあたりも改善された形だ。
液晶上部には、92万画素のWebカメラとステレオマイクが搭載されている。Webカメラはビデオチャットなどに利用でき、ステレオマイクではノイズキャンセル機能を利用できる。なお、4Kタッチ対応液晶を選択すると、Webカメラに加えて、IRカメラが搭載され、Windows Hello対応の顔認識機能も利用できる。
キーストローク1.3mmで快適にタイピングが可能
キーボードは、6列配列のアイソレーションタイプであり、キー配列も標準的だ。キーピッチは18.7mmと十分だ。また、薄さを重視したモバイルノートPCや2in1では、キーストロークが1mm程度しか確保されていない製品もあるが、本製品のキーストロークは1.3mmであり、打鍵感も優れている。
さらに、キーボードバックライトも搭載されており、暗い場所でもミスタイプを防げる。最上段のファンクションキーはやや小さいが、このサイズのノートPCのキーボードとしてはよくできたキーボードである。ポインティングデバイスとしては、クリックパッドを搭載。最近主流のパッドとボタンが一体化したタイプであるが、パッドのサイズが94×61mmと比較的大きく、操作性は良好だ。
USB 3.1 Type-Cを2基搭載
本体の薄さを重視したため、インターフェイスは必要最小限のものに抑えられており、USB 3.1 Type-Cを2基とヘッドフォン/マイク端子を備えるのみだ。USB 3.1 Type-Cは、上下の区別がないことが特徴であり、本体への給電もこのポートを利用する。
また、Thunderblot 3やパワーオフUSB充電機能もサポートする。本体から直接外部ディスプレイに出力することはできないが、オプションとして用意されている「HP USB-Cトラベルドック」や「HP Elite USB-Cドッキングステーション」をUSB 3.1 Type-Cポートに接続すれば、HDMIや有線LAN、通常サイズのUSBポートなどを利用できる。ワイヤレス機能としては、IEEE 802.11ac対応無線LANとBluetooth 4.2をサポートする。
サウンド機能にもこだわっており、Bang & Olufsenとの共同開発による高音質スピーカーを4基搭載する。スピーカーは底面に配置されており、パームレストに手を載せていても、音の出口が塞がれるようなことはなく、スピーカーからの音は机に反射して耳に届くように設計されている。
バッテリは4セルで、公称バッテリ駆動時間は最大約11.5時間(4Kタッチ対応液晶モデルは最大約7時間)と長い。実際にバッテリベンチマークソフトの「BBench」(海人氏作)を利用し、1分ごとに無線LAN経由でのWebアクセス、10秒ごとにキー入力を行なう設定で、バッテリ駆動時間を計測したところ(電源プランは「バランス」、液晶輝度は「50%」)、9時間9分という結果になった。無線LANを常時有効にした状態で9時間持てば、十分合格と言えるだろう。
ACアダプタもコンパクトで、ACプラグ部分を折りたためるようになっているので、本体と一緒に携帯しやすい。ケーブル込みの重量も実測で212gと軽かった。
Core m搭載ながら、Core i7に迫る性能を実現
参考のためにベンチマークテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、「PCMark 8」、「ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K」、「ファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク」、「CrystalDiskMark 3.0.3b」、「CrystalDiskMark 5.1.2」である。比較用として、レノボ・ジャパン「Lenovo YOGA 900S」、レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Carbon」、レノボ・ジャパン「ThinkPad X1 Yoga」の値も掲載した。
【表1】検証機
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HP EliteBook Folio G1
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Lenovo YOGA 900S
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ThinkPad X1 Carbon
|
ThinkPad X1 Yoga
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CPU
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Core m5-6Y54(1.1GHz)
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Core m5-6Y54(1.1GHz)
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Core i7-6600U(2.6GHz)
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Core i7-6500U(2.5GHz)
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GPU
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Intel HD Grapics 515
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Intel HD Grapics 515
|
Intel HD Graphics 520
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Intel HD Graphics 520
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結果は下の表に示した通りで、同じCore m5-6Y54を搭載したLenovo YOGA 900Sに比べると、全体的にスコアが高い。ドライバのバージョンの違いなども影響している可能性もあるが、Lenovo YOGA 900Sよりも冷却性能が高く、TurboBoostテクノロジによるクロック向上率が高いと思われる。PCMark 8のスコアは、Core i7を搭載したThinkPad X1 CarbonやThinkPad X1 Yogaに迫っており、実際の使用感も快適であった。
なお、前述したように、今回の試用機はSATA接続のSSDが搭載されていたため、CrystalDiskMarkのスコアは、PCI Express接続のSSDを搭載した他製品よりも低い。PCI Express接続のSSDを選択すれば、PCMark 8のスコアもさらに上がると期待できる。
【表2】ベンチマーク結果
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HP EliteBook Folio G1
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Lenovo YOGA 900S
|
ThinkPad X1 Carbon
|
ThinkPad X1 Yoga
|
PCMark 8
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Home conventional
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2,106
|
2,165
|
2,635
|
2,590
|
Home accelerated
|
3,167
|
2,836
|
3,176
|
3,167
|
Creative conventional
|
2,341
|
2,081
|
2,691
|
2,694
|
Creative accelerated
|
3,660
|
3,242
|
3,890
|
4,036
|
Work conventional
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2,853
|
2,689
|
2,928
|
2,794
|
Work accelerated
|
4,074
|
3,952
|
4,063
|
3,995
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ドラゴンクエストX ベンチマークソフト Ver.1.4K
|
1280×720ドット 最高品質
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4,622
|
3,510
|
6,796
|
7,048
|
1280×720ドット 標準品質
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5,632
|
4,491
|
6,844
|
8,339
|
1280×720ドット 低品質
|
6,608
|
4,649
|
6,851
|
9,644
|
1920×1080ドット 最高品質
|
2,735
|
1,757
|
3,109
|
3,822
|
1920×1080ドット 標準品質
|
3,492
|
2,682
|
4,256
|
4,950
|
1920×1080ドット 低品質
|
3,998
|
2,800
|
5,835
|
5,979
|
ファイナルファンタジーIXV 蒼天のイシュガルドベンチマーク
|
1280×720ドット 最高品質
|
1,114
|
967
|
1,713
|
1,812
|
1280×720ドット 最高品質(Direct X9相当)
|
1,457
|
1,260
|
2,284
|
2,326
|
1280×720ドット 高品質(デスクトップPC)
|
1,253
|
1,154
|
1,975
|
1,976
|
1280×720ドット 高品質(ノートPC)
|
1,541
|
1,224
|
2,288
|
2,416
|
1280×720ドット 標準品質(デスクトップPC)
|
2,178
|
1,792
|
3,280
|
3,449
|
1280×720ドット 標準品質(ノートPC)
|
2,361
|
1,825
|
3,273
|
3,462
|
CrystalDiskMark 3.0.3b
|
シーケンシャルリード
|
479.3MB/s
|
1262MB/s
|
1648MB/s
|
1848MB/s
|
シーケンシャルライト
|
385.0MB/s
|
305.4MB/s
|
1539MB/s
|
1535MB/s
|
512Kランダムリード
|
248.8MB/s
|
622.5MB/s
|
1224MB/s
|
1350MB/s
|
512Kランダムライト
|
337.7MB/s
|
305.2MB/s
|
1452MB/s
|
1517MB/s
|
4Kランダムリード
|
31.59MB/s
|
39.89MB/s
|
51.05MB/s
|
50.39MB/s
|
4Kランダムライト
|
78.38MB/s
|
110.8MB/s
|
139.8MB.s
|
133.1MB/s
|
4K QD32ランダムリード
|
332.3MB/s
|
248.4MB/s
|
555.6MB/s
|
490.6MB/s
|
4K QD32ランダムライト
|
184.6MB/s
|
286.7MB/s
|
418.7MB/s
|
400.6MB/s
|
CrystalDiskMark 5.1.2
|
シーケンシャルリードQ32T1
|
515.1MB/s
|
1569MB/s
|
2592MB/s
|
2519MB/s
|
シーケンシャルライトQ32T1
|
455.7MB/s
|
309.2MB/s
|
1533MB/s
|
1542MB/s
|
4KランダムリードQ32T1
|
264.7MB/s
|
241.6MB/s
|
545.9MB/s
|
500.3MB/s
|
4KランダムライトQ32T1
|
220.9MB/s
|
301.1MB/s
|
251.7MB/s
|
248.1MB/s
|
シーケンシャルリード
|
481.9MB/s
|
1280MB/s
|
1854MB/s
|
1598MB/s
|
シーケンシャルライト
|
397.0MB/s
|
308.5MB/s
|
1528MB/s
|
1546MB/s
|
4Kランダムリード
|
32.92MB/s
|
42.63MB/s
|
53.99MB/s
|
52.80MB/s
|
4Kランダムライト
|
92.42MB/s
|
149.5MB/s
|
164.5MB/s
|
144.6MB/s
|
ビジネス向けモバイルノートPCとして、非常に完成度の高い製品
Folio G1は、軽くて薄くて高性能、さらに堅牢でバッテリ駆動時間も長いという、ビジネス向けモバイルノートPCで重視されるポイントの全てを高いレベルでクリアした、非常に完成度の高い製品だ。
薄さを重視したため、標準搭載のインターフェイスは最低限だが、オプションのHP USB-Cトラベルドックなどを利用することでカバーできる。デザインも洗練されており、ビジネス向けモバイルノートPCとしてはもちろん、コンシューマ用途にもお勧めしたい。